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【修了生の小松原宏子さんが執筆】″かつての子どもたちにも読んでほしい″ 「やまホテ」シリーズに込めた思い

【修了生の小松原宏子さんが執筆】″かつての子どもたちにも読んでほしい″ 「やまホテ」シリーズに込めた思い
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JVTA修了生の小松原宏子さんが執筆した児童書『ホテルやまのなか小学校』がシリーズ化され、人気を集めています。
 
『ホテルやまのなか小学校』は、廃校となった小学校をホテルとして運営する子どもたち(実は動物)と、客として訪れた大人たちとの交流を描く物語。現在、『ホテルやまのなか小学校』と『ホテルやまのなか小学校の時間割(じかんわり)』(ともにPHP研究所)の2冊が出版されています。小松原さんと、編集の「本作り空Sola」檀上聖子さんにこの作品が生まれたきっかけやシリーズ化への経緯、ストーリーに込めた想いなどを聞きました。
 
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<小松原宏子さん>(執筆)
JVTAの修了生。映像翻訳者のほか、児童文学作家としても活躍。著作に『いい夢ひとつおあずかり』(くもん出版)、『名作転生』1巻~3巻(学研プラス)、『ホテルやまのなか小学校』シリーズ(PHP研究所)。翻訳に『スヌーピーと、いつもいっしょに PEANUTSを生んだチャールズ・シュルツ物語』(学研プラス)『ひかりではっけん!シリーズ』(くもん出版)など。
 
◆原作は新聞連載
この作品は、2009年10月に毎日新聞大阪本社版の童話欄「読んであげて」で30日にわたり連載されていた物語が原案になっています。当時から好評を頂いていて、「いつか1冊の本にまとめたい」という思いながらもなかなか実現できず、2017年にやっと1冊目が出版されました。当時読んでいた子どもたちがもう少し成長して、また手に取ってくれているかもしれません。当時は関西限定だったので単行本になったことで、より幅広い層に読んでもらえているのがうれしいですね。
 
◆シリーズ化のきっかけは、小学館児童出版文化賞の候補にノミネート
連載を基にもっとお話を膨らませて単行本用に改訂しました。単行本ではホテルのお客さんの数は2人ずつですが、基のお話には3人いて、実は1人減っています。1冊目の時からシリーズ化のお話は出ていて、約1年後に実現しました。1作目が小学館児童出版文化賞の候補になったことも続編につながりました。最終的には選にもれましたが、ノミネートされるだけでも名誉のある賞なので、出版できたことは本当に有難かったです。
 
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◆シリーズのテーマは、自分の小学校時代の忘れ物を取りにいくこと
「こういうホテルがあったら泊まってみたいな」という私自身の願望を物語にしました。ここに登場するお客さんはみな小学校があまり好きじゃなかった人たちで、その頃の自分にいい思い出がありません。このシリーズのテーマはそんな自分の小学校時代の忘れ物を取りにいくというイメージです。このホテルでの滞在中にお客たちは、子ども時代を追体験し、当時の満たされない思いが昇華されていきます。「新しい何かが起こる」というよりは、何かに気づいたり、忘れかけていた思い出の中に答えが見つかったりというような内容になっています。例えば、世界一の作品を作りたい編み物作家は、ひたすら大きなレースを編み続けるうちに何を目指しているのか分からなくなってしまうのですが、ホテルのスタッフと触れ合う中で本当に大事なものに気づいていくのです。
 
◆児童文学を書く際にこころがけていること
今回のシリーズはよりメルヘンでファンタジーの要素が強いと思います。読者からは映像化したものを見たいという声もありました。皆それぞれに自分の小学校の家庭科教室や給食室などのイメージがあるので、ホテルの内観もイメージしやすいかもしれません。心がけているのはファンタジーでありながらもあまり現実離れした別世界ではないこと。身近な日常の中に少しファンタジーが感じられて、「あるかもしれない」という親近感が湧くような内容にしています。私自身は小学校は楽しくてずっといたい、と思うほどでした。そんな思いを持っていた“かつての子どもたち”にも読んで頂けたらと思います。
 
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<本作り空Sola 檀上聖子さん(企画・編集・制作)>
2004年に株式会社本作り空 Solaをパートナーの檀上啓治さんと設立。自社企画ものを中心に、企画立案から執筆、翻訳、編集・制作まで一貫した本作りをおこなっている。2015年からは隔月で「Sola1冊の本プロジェクト」を開催。図書館司書、学校司書、翻訳者、画家、作家、編集者など十数名が集い、検討事項を決めて担当者やゲストスピーカーによる発表や読書会などを続けている。「すべての子どもたちに本を」モットーに、児童書作品(創作、ノンフィクション、翻訳)の発掘やさまざまな要因で本が届いていない子どもたちへの読書支援をしている。
 
◆「やまホテ」は光る原石
小松原宏子さんの『ホテルやまのなか小学校』(以降「やまホテ」)は、キラッと光る原石でした。私たちが進める「Sola1冊の本プロジェクト」からこれまで7冊の本が巣立っていきました。児童書をとりまくさまざまな立場の人たちと意見交換するなかで新しい作品を発掘していきたいと思い、プロジェクトの場で作品検討を続けています。『ホテルやまのなか小学校』と『ホテルやまのなか小学校の時間割』はそのなかの2冊です。
 
◆魅力は子どもたちのやってみたいことを実現したこと
「やまホテ」の魅力は、子ども(実は動物)が学校を舞台に「ホテルごっこ」をしていること。子どもならみんな「やってみたい!」と思うことがお話の軸になっている、そこにあると思います。「学校に泊まってみたい!」という子どものロマンがまるごと物語になっているのです。主人公はホテルのオーナー「ミナさん」たち。読者(小学校低・中学年)の子どもは動物たちの心に寄り添いながら読んでいきます。宿泊客としてやってきた大人たちは、純粋な動物たちとの関わりによって、自分の心を取り戻していきます。これからもさまざまな事情を抱えたおとなたちが登場し、続編が生まれる可能性が無限にあります。
 
1冊目が好評で増刷できたおかげで、続編を出すことができました。ぜひシリーズとして続け、できるだけ多くの方に手にとっていただけるとありがたいです。
 
◆子どもの読者から届いたメッセージ
子ども読者から届いたこの本の感想を少しご紹介しましょう。
●出てくる食べものが、みんなおいしそう。
●学校にとまってみたい、小学生の願望やあこがれがそのまま書いてある。給食室でつくったごはん、とび箱で作ったまくら、プールの露天風呂、スイートルームは保健室……などなど。
●2回、3回と読んで、そのたびに楽しい。
●はっきり「動物」とは書いてないけど、なんとなくわかるのがワクワクする。
 
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◆人を引き寄せるのは、校舎が持つ不思議な力
この「ホテル」にはだれでも滞在できるわけではありません。「ホテル」が人を「選んで引き寄せる」のです。「ホテル」の舞台となる校舎は建物ですが、まるで生きているように思えます。100年以上「生きて、意志を持った存在」で、人間たちを引き寄せている。2作目の「ホテルやまのなか小学校の時間割」の原稿を検討している過程で、今回はこの「校舎」のもつ不思議な力のシステムをちょっぴり解き明かしてほしい気がすると、小松原さんにお話ししたことがありました。小松原さんは2作目で見事に「時間」をテーマに「校舎」の謎に挑戦してくださいました。
 
「やまホテ」ワールドにぴったりの絵を描いてくださった山形在住の亀岡亜希子さんは、原稿を読みはじめてすぐ頭に浮かんだ小学校があるとのことで、福島県奥会津にある廃校になった小学校の写真を送ってくださいました。その年の5月に撮影されたそうで、これも「ホテル」が引き合わせてくれたご縁のように思います。
 
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春休みの読書にもおすすめの1冊。ぜひ、読んでみてください!
 

『ホテルやまのなか小学校』
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-78677-3
 
『ホテルやまのなか小学校の時間割(じかんわり)』(PHP研究所)
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-78829-6
 

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