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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が開幕、監督が語る英語字幕への想い

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が開幕、監督が語る英語字幕への想い
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“若手映像クリエイターの登竜門”として知られるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭が7月15日(土)に開幕した。今年20周年を迎えるこの映画祭は、『死刑にいたる病』の白石和彌監督、『浅田家!』の中野量太監督、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督、『さがす』の片山慎三監督などを輩出してきた。国内コンペティションでは、日本映画界の未来を担う若手映像クリエイターが果敢に表現の可能性に挑んだ、長編6作品、短編 8 作品がノミネート。JVTAは毎年、国内コンペティションの上映作品の英語字幕制作で協力している。今年もオープニング作品1本、国内コンペ長編4本、短編5本の字幕を修了生が手がけた。

 

※オープニング上映『瞼の転校生』(藤田直哉監督)に出演の高島礼子さん、松藤史恩さん、葉山さらさんも来場

 
7月15日(土)に行われたオープニング・セレモニーには、出品作品に関わるゲストや審査員、主催者など総勢32名が参加。恒例の鏡割りなど、賑やかな会場にJVTAの担当翻訳ディレクターも駆けつけた。会場でお会いした監督に英語字幕についてお話を伺った。
 

『繕い合う・こと』 長屋和彰監督

 
亡き父の跡を継ぎ、金継ぎ師の道を選んだが、あるわだかまりを抱える兄・護。これといった目標もなく、父を継いだ兄に対して焦りや羨望から苛立ちを覚えている弟・幹。不器用な兄弟と周囲の人々が織り成す物語。(公式サイトより)

©2023 Kazuaki Nagaya

 
長屋和彰監督はこれまで役者として映画やドラマ、舞台などに出演。今回が初監督作品となる。本作では脚本も担当したほか、主人公の護役で主演。年末年始の数日のストーリーであり日本特有のセリフや場面もある。
 
「僕自身が英語に詳しいわけではないので、字幕を見てすぐに理解できるわけでありません。英語の字幕を翻訳機能にかけながらニュアンスを確認させていただく中で、ちょっと自分が意図していたのと違うなあと思った箇所は少し検討していただきました。逆にこういう言い方をするんだと面白い作業でもありました。例えば『良いお年を』は年が明ける前でも英語では“Happy New Year.”でいいんだとか。日本の感覚では明けてから言うものだと思っているので、これは新鮮でした。」(長屋和彰監督)
 

©2023 Kazuaki Nagaya

兄弟は、密にコミュニケーションをとるわけではく、微妙に距離があるけれど、遠い存在ではない。そんなリアルな姿を描いたという本作。なにげない、短い言葉の会話が多いのも特徴だ。日本語は短い言葉でもセリフが成り立ってしまうが、英語は主語述語がないと意味をなさず、英語だと長くなりがちで、字幕翻訳者には悩みどころになる。
 
「作り手として一番気になるのは外国の人が見た時にニュアンスが同じように伝わっているのかなというところですね。翻訳機能にかけた時にも、日常会話はそれほど気にせずにお任せしました。日本独特の挨拶である『いってらっしゃい』『いってきます』というセリフもありますが、字幕を見てニュアンス的にひっかかるような違和感はなく拝見しました。『お大事になさってください』というセリフは“ものを大事にする”と“体調を気遣う”とどちらの意味にもとれるように考えていたのですが、英語でも同じように調整してくださっていました。」(長屋和彰監督)
 

©2023 Kazuaki Nagaya

作中でテレビやラジオの音声をどこまで字幕に反映するかも、難しいポイントだ。すべての情報を出したいのが基本だが、セリフの後ろに別の情報が流れている場合、それぞれ異なる内容の音声を同時に字幕にすると、視聴者が混乱する恐れがあるからだ。時にはセリフをきちんと伝えるために敢えて省くこともある。
 
「実は、カーラジオから流れている番組は、“軽快なラジオが流れている”といったテロップで入れるくらいでいいのかなと思っていたんです。そこでお渡しする台本にも文字として入れていなかったのですが、実際に字幕をみたら細かくラジオの音声を拾ってくださっていたのが意外でした。この場面はセリフがほとんどなく、ラジオがかなり大きく聞こえているので、字幕なしではかえって違和感があるとのことで細かく聴き起こしてくださったと伺い、有難かったです。お手数をおかけしました…。」(長屋和彰監督)
 

※作品の詳細はこちら

https://www.skipcity-dcf.jp/films/jf03.html
※長屋和彰監督 インタビュー
https://www.skipcity-dcf.jp/news/news/23071304.html
 

『A nu / ア・ニュ ありのままに』 古賀啓靖監督

 
春から大学生になる千晴の彼女・祐加は関東の大学へ進学することになった。引っ越しの前日、別れの挨拶に向かう道中、千晴は二人が付き合うきっかけとなった、波乱に満ちた二年前のホワイトデーの一日を思い出す。(公式サイトより)
 

©古賀 啓靖

この作品のテーマは、ホワイトデーという日本ならではの文化だ。英語字幕ではまずそのシチュエーションを伝えなければならないという難しさがあった。
 

「ホワイトデーというアジア圏以外にはない文化を英語圏の人にどう伝えるか、翻訳者の方は苦労されたと思います。私も中高で国際系の学校に通っていて英語にも触れる機会が多くあったのですが、説明的にならないように自然に字幕の中に情報が織り込まれていて、文化を知らなくても分かりやすいなと思いました。生で学生同士が話しているニュアンスを伝えるのは日本語でも難しいので、短いセリフの中で工夫してくださったのだと思います。」(古賀啓靖監督)
 

©古賀 啓靖

古賀監督は約2年の歳月をかけてCGアニメ制作のほぼすべてを手がけた。お菓子作りの様子などもリアルに描かれており、とてもおいしそうだ。ホワイトデーは、お返しに何を渡すかで一つひとつに込められたメッセージがあるのをご存じだろうか。キャンディ、マシュマロ、マドレーヌ、クッキーとそれぞれに意味があるのだ。
 
「セリフの中に『マシュマロ渡したくせに…』という言葉があるのですが、字幕に中に“あなたのことが嫌いです”“その気持ちはお断りします”というニュアンスをきちんと盛り込んでくださっていたのが嬉しかったですね。お菓子作りの映像にはこだわりました。映像の中にメタファー、“”お菓子言葉”を使ってノンバーバルなコミュニケーションツールとしてホワイトデーというテーマを取り上げたのですが、それが翻訳者さんにもしっかり伝わり字幕にも反映されていたことは、制作者冥利に尽きます。」(古賀啓靖監督)
 
字数制限がある中で、直接セリフにはない説明を補足して、ニュアンスを伝えるのは至難の業だ。また、翻訳ディレクターはアニメの絵を字幕で隠さないように情報の取捨選択や表示位置も意識したという。
 
「作中ではセリフをほぼ廃して、画だけを見ても誰もが主人公の千晴の感情が伝わるように工夫しているシーンもあります。制作いただいた字幕を拝見して特に後半部分に向かってより熱を帯びてきて、登場人物の言葉として生きた字幕になっているなあと感じました。ありがとうございました。」(古賀啓靖監督)

©古賀 啓靖

 

※作品の詳細はこちら

https://www.skipcity-dcf.jp/films/js03.html

 

◆『地球星人(エイリアン)は空想する』 松本佳樹監督

 
正義感が強く、嘘を憎む記者・宇藤のもとに、「UFOのまち」石川県羽咋市で起きた「大学生エイリアンアブダクション事件」のネタが舞い込む。その嘘を暴こうと取材を始めた宇藤は、不可解な事件の沼に嵌っていく。(公式サイトより)
 

©世田谷センスマンズ

この作品はドキュメンタリータッチとなっており、情報量もセリフの量も多い。担当ディレクターによると字幕の収録現場でも最も作業に時間がかかった作品でもある。堅い言い回しは堅さを残しつつも字幕として分かりやすくするのが難しかったという。
 
「字幕を依頼するため台本をお渡しする際に字幕が読みきれないのでは? どうなるんだろう?と考えていました。情報量が多く、どこまで訳すかが難しいところがあったと思います。ドキュメンタリータッチで説明セリフが多いので、字幕にできない部分があれば省略しても構わないとお伝えするつもりでしたが、細かい言い回しというか、僕の細かいこだわりをくみ取ってうまく調整して翻訳してくださり有難かったです。『地球人はEarthlingなのか!』などこちらもイメージどおりでした。」(松本佳樹監督)
 

昨今は映像の中にSNSやLINEの画面が映ることが多く、情報の取捨選択や字幕の位置を調整する必要がある。字幕の収録現場でも細かい調整が行われた。最初は複数の箇所に字幕を入れていたが、収録の段階で読みきれないと判断し、情報の取捨選択や表示位置を細かく調整、カット割りの細かい箇所もあり、字幕が邪魔にならないよう意識したという。
 

©世田谷センスマンズ

「SNSのカットは日本語で見ても読みきれなくてもいいと思っていました。断片的なワードを見て、誹謗中傷が沢山きていることが分かればいいと思っていたのですが、その意図は字幕でもきちんと伝えてくれていました。博物館の中で流れている解説の音声の字幕化やニュース映像の場面ではテロップに字幕が被らないように位置の調整など、情報はきちんと入れながら視覚的にも見やすいと感じました。説明セリフが多いのですが、日本語の固有名詞はそのままで、あるパートは海外の人むけに置き換えて解説してくれるなど想像以上に情報を入れて、細かいところまで気配りをしてくださっていました。ありがとうございます。僕は英語のことは詳しくは分からないのですが、英語字幕を拝見して、違和感はなかったですね」(松本佳樹監督)

 

©世田谷センスマンズ

 
※作品の詳細はこちら
https://www.skipcity-dcf.jp/films/jf01.html

※松本佳樹監督 インタビュー

https://www.skipcity-dcf.jp/news/news/23071502.html
 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、7月22日(土)から26日(水)までオンライン配信を実施。皆さんもぜひ英語字幕と共に、作品をご覧ください。
 

◆SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023(第20回)
期 間:
《スクリーン上映》2023年7月15日(土)~ 7月23日(日)
《オンライン配信》2023年7月22日(土)10:00 ~ 7月26日(水)23:00
会場:SKIP シティ彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール、多目的ホールほか(埼玉県川口市) 主催:埼玉県、川口市、SKIP シティ国際映画祭実行委員会
公式サイト:https://www.skipcity-dcf.jp/

 

【関連記事】【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭×JVTA】新進気鋭のクリエイターの映画に向き合う英語字幕PROゼミとは?

https://www.jvta.net/tyo/skipcity2023/

 

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