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インバウンド対策で、映像翻訳会社が成果を上げる理由

インバウンド対策で、映像翻訳会社が成果を上げる理由

2024年の訪日外国人数は過去最大だった2019年の水準を超えて3,477万人となるとも予想[i]され、今やインバウンド消費は自動車に次ぐ輸出産業として「日本経済をけん引する存在」[ii]だ。
ところが、都心や大都市では外国人観光客の姿をよく目にするものの、外国人の訪問率が1%未満の都道府県は22県と、地方ではその盛り上がりはいまいち[iii]。特定の都市やスポットに観光客が集中することでオーバーツーリズムも課題となっている。今、インバウンド対策にモヤモヤとした思いを抱えている企業や自治体担当者も少なくないはずだ。

インバウンド対策が叫ばれるずっと前から
実はインバウンド対策がこれほど大きな話題となる以前から、JVTAは地方自治体や企業からインバウンド対応策の依頼を受けてきた。その数すでに100件以上。しかし、なぜ翻訳会社に依頼がくるのだろう? JVTAインバウンド対策事業担当の丸山雄一郎に聞いた。「当初はウェブサイトや広報物の翻訳依頼をいただいていました。そのうち『海外向けにどんなメッセージを打ち出すべきか』、『どうしたら良さを伝えられるか』という自治体のインバウンド対策全般にかかわる相談を受けるようになったのです」と丸山。現在では、依頼内容はウェブサイトや映像作品の多言語翻訳から、海外版ウェブサイトの制作、ソーシャルメディア用の動画制作と管理、自治体へのインバウンド対策セミナーまで多岐に渡る。しかも単発ではなく、長くかかわり続けるプロジェクトも多い。

直感的に分かる方法で、地元の良さを発信
たとえば静岡県伊東市の「外国人にやさしい街」を目指そうという動きにJVTAは8年前から協力している。県内随一の温泉地ではありながら、箱根や熱海といった超メジャー観光地と隣接し、外国人には訪れにくい地域だったという伊東市。そんな同市の委託を受けてJVTAが運営する外国人向け観光情報サイトITO JAPANでは、英語のブログや英語字幕付き動画で、おすすめフードスポットや季節のイベント情報を頻繁に更新、伊東市の生きた情報を発信している。なかでも英語・中国語・韓国語で利用できる多言語マップは優れモノだ。市内の名所がGoogleマップに網羅され、それぞれの名所に各言語での詳細な説明がついている。しかも動画付きなので直感的にどんな場所なのか分かる。コロナ禍を経て、拡大するインバウンド需要への備えは盤石だ。

ITO JAPANの伊東市多言語観光マップ。これ1つで観光ガイドと地図になり便利だ。


地域が気づいていない魅力を発掘

東京都心から南へ約180kmに位置する伊豆諸島の神津島。この風光明媚な島の海外向け観光サイトの制作と更新作業もJVTAが行っている。日本語版観光サイトと海外向け版はデザインがかなり違う。両サイト共に自然の魅力を伝えているが、海外向けでは、島でのおすすめアクティビティ、島へのアクセス、宿泊施設などの基本情報が前面に出ており、さらにリゾート地で仕事をしつつ休暇も取るワーケーションの提案や、ガイドツアーの紹介などもトップに掲載されている。

ガイドツアーやワーケーションの提案は海外向けならでは。


「JVTAの取材チームも映像制作者はみんな海外にルーツを持つスタッフ。その点を踏まえ、外国人から見たらこういう点が魅力なんですよ、ということを企画段階でクライアントさんにお伝えします。そうすると、『まさかこんなところが魅力とは思わなかった』と仰る方も多くいらっしゃいます」と丸山。そもそもの企画段階からJVTAは関わり、ウェブサイト用の記事、写真や動画の取材・撮影もすべて行ったそうだ。

字幕翻訳の考え方をインバウンドに
日本を初めて訪れる外国人に響くメッセージは、日本人向けのものとは異なることが多い。たとえばYouTubeの動画タイトルひとつとっても、日本語のタイトルは内容を詰め込んだ長いものが多いが、英語ではできるだけ簡潔に書かれている。「限られた文字数で完結に伝える技術が必要とされる日英・英日の字幕翻訳のノウハウがあるからこそ、そこに気づくことができるんです」と映像翻訳の技術が応用できることにも丸山は言及。字幕翻訳の中心にあるのは視聴者。ここでも情報を受け取る側、つまり外国人の視点に立ったコンテンツ作りに字幕翻訳の経験が活かされている。

海外人気に応えるには、多言語表示は必須
最近では日本のオンラインショップでもGoogle翻訳機能などを使って多言語翻訳を取り入れているお店も増えた。実際、オンライン消費者の約72%が自国語で表示されているウェブサイトから購入したいと答えているという調査[ⅳ]もあり、多言語表示が売り上げに貢献することは間違いない。しかし、伝えたい情報、伝えるべき情報が機械翻訳で正確に伝わっているかは疑問が残る。ある製菓会社では、英語・中国語(簡)・中国語(繁体字)・タイ語・韓国語の5言語での商品説明の翻訳をJVTAに発注している。JVTAは商品情報の更新なども行っており、特にアレルギー成分表示などには細心の注意を払う。たとえ日本では誰でも知っているような商品でも、商品の基本情報を原材料情報とともに多言語で丁寧に見やすく伝えることで、初めて目にする海外の人も安心して購入できるだろう。

翻訳で訪日客の「なぜ」を解決
冒頭に挙げたオーバーツーリズムの課題には、外国人がルールを理解していないという背景もあるだろう。よく話題になるのが温泉や銭湯の利用マナー。JVTAは自治体や企業に、外国人に伝わる言い方、メニューの書き方、配布物のデザインなどのセミナーを実施することも多い。イラストとともにマナーを説明するポスターを作る際、JVTAの提案で「湯船に入る前に体を流すのは、湯船をみんなで気持ちよく使うため」と理由を付け加えたところ、マナーを守る利用客が増えたという声が自治体から寄せられたそうだ。こうした自治体と訪日外国人のギャップを埋める作業もJVTAは行っている。

ウェブサイトや広報媒体を英語をはじめとした外国語に翻訳することで、海外の人に対して「まずはウェルカムの気持ちを伝えることがインバウンド対策では大切」と丸山は強調する。その上で、実際の購入や訪問、日本文化の理解などに繋げるには、JVTAの外国人の視点に立った企画作りと、分かりやすく丁寧な表現を生み出す「言葉のプロ」の力が強い味方になるだろう。

by Yuko Naito

[i] Mizuho RT EXPRESS(2024)「2024年のインバウンド見通し」
[ii] 経産省(2023)『通商白書2023』第二章第三節
[iii] Mizuho RT EXPRESS(2024)「2024年のインバウンド見通し」
[ⅳ]  “Speak to Global Customers in Their Own Language.” Harvard Business Review, Accessed August 22, 2024

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