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“ものづくりのバリアフリー”とは? 人気デザイン会社の取り組み

“ものづくりのバリアフリー”とは? 人気デザイン会社の取り組み
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2020年のパラリンピックを前に、さまざまな分野でバリアフリーに関連する試みが行われています。JVTAは「映像のバリアフリー化」をするプロを育成することでサポートしています。先日、バリアフリー事業部の小笠原ヒトシ プロデューサーが注目したのは、点字の持つ美しさをグラフィックとしてプリントしたTシャツ「Braille(ブライユ)」。胸元には、ヘレン・ケラーの言葉が点字でプリントされ、右の肩口には「ありがとう」の文字が印刷されています(右の肩口にある理由は、視覚障がい者の方をガイドする際にはここに手を添えてもらうことが多いことから)。
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点字をプリントしたTシャツ「Braille(ブライユ)」

 
このTシャツを販売しているのは、独創的でスタイリッシュなデザインの生活用品を作り出しているアッシュコンセプト。「Braille」は、同社が障がい者と共に展開するブランド「equalto(イクォルト)」のオリジナル商品です。Brailleとは、フランスの点字発明者、ルイ・ブライユにちなんでいます。同社が取り組むのはユニバーサルデザインではなく、「ものづくりのバリアフリー化」ということで、お話を聞いて伺いました。

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お話を伺ったお二人
戸村夏佳さん(アッシュコンセプト 広報)
本木美穂さん(NPO法人ディーセントワーク・ラボ)

 
JVTA 「equalto」ブランドの開発のきっかけを教えてください
 

戸村さん 東日本大震災後、障がい者のものづくりを応援するというコンセプトで、デザインのコンペティション(ART CRAFT DESIGN AWARD)を開いたのが「equalto」誕生のきっかけです。私たちが「equalto」で実現したいのは、作り手にとってモノづくりのバリアフリー化をしていくことです。2013年からNPO法人ディーセントワーク・ラボさんと協力し、「equalto」のブランドで販売するためのデザインコンペティション「equalto award」を開催しています。こうしたコンペの中で「Braille」は生まれました。「equalto」ではこれまで15以上のアイテムを商品化しています。

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小さなフェルトのブックマーク「Bookmark」

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ひらがなの箸置き 「Hiragana」
 
JVTA 私たちは映像翻訳のスキルを生かし、「映像のバリアフリー化」をするプロを育成しています。「ものづくりのバリアフリー化」とは具体的にどんな取り組みなのでしょうか?

 
戸村さん 私たちが一緒に取り組む作業所には知的障がい、精神障がい、身体障がいの人たちが多いのですが、一般的にこうした施設で手作りされた商品は地元のバザーなどで極めて安価な額で販売される傾向にあります。ですから、物を作った人たちへ還元される額も低くなってしまうのです。実際、就労継続支援事業所で働く障がい者の皆さんの平均賃金は15,000円前後というデータがあります(出展/平成27年度厚生労働省調査 就労継続支援B型事業所)。全国各地にある作業所の協力を経て商品化していますが、縫製や磁器、木工などそれぞれの得意な分野があり、それを生かしたものづくりを意識しています。デザイナーと共にその素晴らしさを見極め、どんな風に加工したら魅力的な商品になって付加価値を付けられるのか。企画段階からそれを一緒に考えて商品化し、店舗で継続的に販売していくのが当社の役割だと考えています。
 

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おまもりを守るカバー「Ohukuro」(左)と磁器の傘ホルダー「Gyutto」(右)
 
JVTA 障がいのある皆さんの生産力とそのクオリティに着目し、それにふさわしい形で商品化することが、「ものづくりのバリアフリー」なんですね。
 
戸村さん はい。私たちは、販売時にも障がい者の方と一緒に作っていることを前面に出していません。まずは商品ありきでフラットな目で見て手に取ってもらいたいからです。手に取った時に裏側の表示を見て初めて、製品の詳細やデザイナーのコメント、作者の皆さんの施設などが分かるようになっています。弊社の他のブランドと並べていても全く引けを取らないクオリティです。バザーやフリーマーケットでは一時的な販売で終わってしまいます。でも企業やデザイナーとコラボすることで新たな可能性が見えてきます。デザインや販路を変えることで、作り手の収入をもっと上げていければと考えています。また大量生産として作れる需要があれば、安定した収入にもつながります。「equalto」がそういういいサイクルをつくるきっかけになればいいなと思います。
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磁器の傘ホルダー「Gyutto」
 

JVTA 商品として魅力的なだけでなく物語もあり、プレゼントにも喜ばれそうですね。具体的にどんな商品があるのか、教えてください。

 
本木さん 例えば、ある作業所は、ガチャガチャで出てくるカプセルにフェルトと石鹸水を入れてマラカスのように振り、丸いフェルトボールをつくるのが得意でした。とても丁寧で綺麗な丸に仕上がったボールが大量にあり、何かに商品化できないかと。デザイナーがそのボールをいくつか持ち帰って考えた結果、紐を2本つけてブックマークとして生まれ変わりました。他にも紐を結んでラッピングなどにも使えます。また大小のボールを組み合わせてマスコットに加工した「Mokemoke」も人気商品となっています。
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戸村さん 「equalto」は、日常で使う便利なアイテムから文房具など幅広いラインナップがあります。木製のパンケース「Fitto」や木でてるてる坊主を模った靴べら「Teruteru」や、革とフェルトを組み合わせたおまもりを守るカバー「Ohukuro」、机の上に置いて使う磁器の傘ホルダー「Gyutto」など実用的ながらスタイリッシュなアイテムも多数あります。かわいいと思って買ったものが、実は障がい者の作業所で作られていて、彼らも同じようにものづくりができることを知る。そんな風に作者と消費者を繋いでいくことを目指しています。
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木でてるてる坊主を模った靴べら「Teruteru」
 
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木製のパンケースの「Fitto」
 
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おまもりを守るカバー「Ohukuro」
 
JVTA 来年に向けた新商品も開発中だそうですね。
 
戸村さん はい。刺し子の技術を活かしたTシャツ「Chikuchiku」を企画しています。縫製が得意な作業所では、とても細かい針目で刺繍ができる技術があります。扇型と直線が混ざっていたりして、まるで現代アートのように個性的な色使いで素晴らしいデザインです。ある作業所には、集中してずっと刺し続けることができる方たちがいて、こぎん刺しのように細かい刺繍が施された小さな生地が大量にあったんですね。当初は施設職員がポーチなどに縫製していたのですが、当社とコラボしたことで、これをTシャツのポケットにする発想が生まれました。色や方向などはすべてお任せしているので、すべて世界に1つしかない1点ものです。刺し手によって全然違うデザインが生まれるのも魅力です。
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来年発売予定の「Chikuchiku」
 
Tシャツ自体も久米繊維工業さんという日本製にこだわったTシャツメーカーとのコラボで、肌触りがよく、両脇に縫い目のない丸編み(チューブ状)の反物を使用することで快適な着心地を実現しました。Tシャツのポケットとしての縫製も施設で行う予定です。Tシャツの地色は白のほか、ネイビーがあります。「Braiile」は残念ながら在庫で終了となりますが、この「Chikuchiku」が来年発売になる予定です。ぜひお手に取ってご覧いただきたいですね。
 
JVTA 今後、どんな素敵なアイテムが登場するのか楽しみにしています。ありがとうございました。

 

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アッシュコンセプト 公式サイト
http://h-concept.jp/
 
「equalto」公式サイト
https://www.equalto.or.jp/
 
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講座の紹介
https://jvtacademy.lpf.jp/chair/lesson3.php
※こちらでもバリアフリーに関するさまざまな方への取材記事を紹介しています。

 
無料説明会のご案内
https://www.jvta.net/tyo/6806/

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