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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第89回 “STUMPTOWN”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第89回 “STUMPTOWN”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第89回“STUMPTOWN”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     

     

    コミックブックから飛び出した、スーパークールな女性私立探偵!
    “Stumptown”は、筆者が3年間待ち望んでいた一作だ(理由は後述)。
    同名のコミックブックが原作、スーパークールな女性私立探偵デックスの魅力が爆発する、痛快なアクションドラマなのだ!
     
    【Stumptown】 オレゴン州ポートランドの愛称。1800年代に、町の急速な発展に伴い木々が伐採され、多くの切り株(”stump”)が残っていたことに由来する。コーヒーチェーンの“Stumptown Coffee Roasters”が有名で、日本では京都に一店舗だけある。
     
    “Meet Dex Parios, private eye”
    デックス・パリオス(コビー・スマルダーズ)は33歳、独身、無職で、バイセクシュアルの退役軍人。ダウン症の弟アンセル(コール・シーバス)と、質素なアパートで暮らしている。愛車は27年落ちの赤いフォードマスタングGTで、酒とギャンブルに溺れ、気が向いた男(あるいは女)と一夜限りの関係を持つ。
     

    荒れた生活には理由がある。
    デックスの恋人だったベニーはネイティブ・アメリカンで、因習に逆らえずに族内婚をさせられた。傷心のデックスは海兵隊に志願した。デックスを忘れられないベニーは、離婚して元恋人を追った。情報分析官になったデックスは、アフガニスタンでベニーと再会する。だがある日、デックスの目前でタリバンの自動車爆弾が起爆し、車内にいたベニーは即死した。
    デックスはPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患い、ことあるごとに爆発のフラッシュバックに襲われる。そして12年たった今も、自分を責め続けている…。
     

    グレイ・マコニール(ジェイク・ジョンソン)はデックスの親友で、2人は一度だけ関係を持った過去がある。かつては腕利きの車泥棒&金庫破りだったが、現在は更生してバーのオーナーだ。
     

    デックスはインディアン居留地のカジノに、1万ドル以上の借金を作ってしまう。カジノのオーナー、スー・リン(タントゥー・カーディナル)は、借金の帳消しと引き換えに、姿をくらました孫のニーナを探すようデックスへ持ち掛けた。
    スー・リンは戦死したベニーの母親で、ニーナはベニーの娘だ。
     

    この事件をきっかけに、デックスは私立探偵となる。他人のトラブルに関わっている間は、自分のトラブルを考えないで済むからだ。
     

    最強の脇役、コール・シーバスって誰よ?
    デックス役のコビー・スマルダーズはカナダ出身、メガヒットしたシットコム“How I Met Your Mother”(2005-2014)のロビン役で大ブレークした。また、『アベンジャーズ』を中心とするマーベル・ユニバースで演じる、S.H.I.E.L.D.の副長官マリア・ヒルも当たり役だ。
    スマルダーズはルックスも雰囲気も原作コミックスのデックスのイメージに近く、私立探偵ドラマでお約束のワイズクラック(軽口)も堂に入っている。コミカルなシーンもアクションも難なくこなし、タフな鎧から垣間見える、デックスの優しい素顔を表現する演技力がある。完璧なキャスティングだ。
     

    デックスの弟アンセルを演じたコール・シーバスは、ダウン症のアクターだ。最近はドラマ界もダイバーシティが進み、それ自体は珍しくはない。だがシーバスの存在感・演技力は群を抜く。22歳で、ギタリスト、モデル、さらにスペシャルオリンピック(知的障害者のオリンピック)の金メダリスト(水泳)でもある。“Game of Thrones”のピーター・ディンクレイジを彷彿させ、声もよく、チャーミングでカッコいい。最強の脇役だ。
     

    デックスをめぐる2人のナイスガイ、元犯罪者の親友グレイを演じたジェイク・ジョンソン(“New Girl”)、デックスに惹かれていく気骨ある刑事ホフマン役のマイケル・イーリー(“Almost Human”)は、エピソードが進むに連れて深みが出てくる。
     

    また、タフなインディアン居留地の実力者スー・リンを演じたタントゥー・カーディナル、町の情報屋でシェフの巨漢トゥーキー役のエイドリアン・マルティネス、ホフマンの上司で次第にデックスの理解者となる警部補コスグローブ役のカムリン・マンハイム(“The Practice”)など、脇役の隅々まで輝いている。
     

    多重構造で面白さはフルサイズ!
    本作は、2019年にDisney傘下の民放大手ABCがシーズン1を放映し、評判を呼んだ。シーズン2の制作も決定したものの、新型コロナのためにキャンセルされてしまった。その後DVDも発売されず、日本での配信もなかったが、本年2月からDisney+のSTARで視聴可能となった(!)。
     

    製作総指揮にも名を連ねる原作者のグレッグ・ルッカは、マーベルやDCにも作品を提供している超売れっ子のコミックブックライター。シャーリーズ・セロン主演のアクション映画『オールド・ガード』(Netflix、2020)の原作者・脚本家でもある。また優れたアクションスリラー作家で、『守護者』 『奪回者』 『暗殺者』などの「ボディガード・アティカス・コディアック・シリーズ」はどれもお勧めだ。
     

    本作の魅力は、①デックスの豪胆で繊細なキャラ、②デックスとアンセルの姉弟愛、③デックス、アンセル、グレイが生み出す疑似家族的な絆、④デックス、グレイ、ホフマンの微妙な三角関係、⑤さらにスー・リンやトゥーキーを加えたアンサンブルドラマとしての強力なケミストリーだ。見どころが多重構造になっているので、エピソードが進むにつれて面白さが雪だるま式に膨らんでいく。
     

    また民放ドラマにしては、遊び心が満載だ。タイトルクレジットやシーンの切れ目に入るコミック調のイラスト、映画・ドラマなどをパロった各エピソードのタイトル、おんぼろマスタングの壊れたカセットデッキからタイミングよく流れ出す意味深な曲の数々など、どれも気がきいている。
     

    脚本はテンポよくセンスよく小気味よく、適度なハードボイルドタッチで、ドライなユーモアがビシビシ決まる。終盤では12年前にアフガニスタンで起きた陰謀が活写され、エンディングは鮮やかなクリフハンガーで着地する。(続きがないのが返す返すも残念だ。)
     

    “Stumptown”の面白さはフルサイズ、アクターはフルスイング、遊び心はフルロード、ストーリーはフルスロットル!
    スーパークールな女性私立探偵デックスの魅力が爆発する、痛快なアクションドラマなのだ!
     

    邦題は『スタンプタウン』、シーズン1は1話約42分で全18話だ。NetflixかAmazonが、Disneyから権利を買ってシーズン2を制作してくれないものか。
     

    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #64
    Title: “Ready to Take a Chance Again”
    Artist: Barry Manilow
    Movie: “Foul Play” (1978)

    抱腹絶倒のコメディに、バリー・マニロウの生ぬるいラブバラードのミスマッチが絶妙だった。
    音楽家のダドリー・ムーアが、コメディアンとして大ブレークした作品でもある。
     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

    ◆バックナンバーはこちら
    https://www.jvta.net/blog/5724/


     

    ※※特報
    同コラム執筆の土橋秀一郎さんがJVTAのYouTubeチャンネルに登壇しました!
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