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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第72回 “WHAT WE DO IN THE SHADOWS”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第72回 “WHAT WE DO IN THE SHADOWS”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第72回“WHAT WE DO IN THE SHADOWS”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     

     

    まったく怖くない、抱腹絶倒のホラー・コメディ!
    今回は日本未放送/未配信の隠し玉を紹介する。
    「大都会で地味に生きる吸血鬼たちの日常をインタビュー形式で綴る、斬新でまったく怖くない、抱腹絶倒のホラー・コメディ」 ―これが“What We Do in the Shadows”だ!
     

    とても残念な吸血鬼たち...
    ―NY南西部にあるスタテン島
    人口約45万人のこの島に、200年以上も同じ屋根の下でひっそりと暮らす4人の吸血鬼がいる。
     

    ナンドール(ケイヴァン・ノヴァク)は元オスマン帝国の兵士だったヴァンパイア。自分ではリーダーのつもりだが、手順や慣習にこだわるコントロールフリークで、メンバーからの信頼度は極めて低い。37回結婚したが、今は独身で寂しい思いをしている。
     

    ラズロ(マット・ベリー)は元貴族のシニカルなヴァンパイア。庭木を剪定して卑猥なオブジェを作るのが趣味だ。かつて切り裂きジャックだったこともある。
     

    ナージャ(ナタシア・デメトリウー)はラズロの妻でジプシー系のヴァンパイア。密かに昔の男(の生まれ変わり)を口説いている。壁のぼりの達人で、時折発する場違いな高笑いが不気味だ。
     

    3人とも殺傷能力、浮遊能力、催眠術などのダークパワーを持ち、コウモリに変身する。小さな牙と古めかしい服装を除けば見かけは人間と変わらないが、姿は鏡に映らず日光にも弱い。
     

    コリン(マーク・プロクシュ)はメガネをかけたハゲ親父にしか見えない、珍種のエネルギー・ヴァンパイア。日光に耐性があり、サラリーマンをしながら、長話で人間を退屈させてエネルギーを吸い取る。
     

    ギレルモ(ハーヴィー・ギーエン)は“familiar”と呼ばれるナンドールの忠実な世話係。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のアントニオ・バンデラスに惚れこみ、吸血鬼になることを切望している。10年も無駄に丁稚奉公している気の毒な青年だ。
     

    吸血鬼は人間の食事をとると死ぬほど吐くので、4人はときどき人を襲って生き血を食らう。だが普段はスマホを使いながらお気楽な生活をしている。彼らは自宅の路地しか支配力を持たず、野心も目的もない、とても残念な吸血鬼なのだ。
     
    だがある日、正統派マスター・ヴァンパイアのアファナス男爵が現れる。アファナスは恐怖に凍り付く4人に対し、スタテン島支配の準備を命じる(それだけかよ?)。
    どうする、残念な吸血鬼たち?
     

    吸血鬼映画・ドラマのアクターたちがゲスト出演!
    吸血鬼3人組を演じたケイヴァン・ノヴァク、マット・ベリー、ナタシア・デメトリウーは、いずれも英国出身のアクター/コメディアン。仰々しく欧州風アクセントを駆使するその雄姿に、誰もが畏敬の念を抱くだろう。
     

    コリン役のマーク・プロクシュは、“The Office”、“Better Call Saul”で記憶に残るアメリカ人コメディアン。飄々としてウザいコリンのキャラを、誰もが愛さずにはいられない。
     

    ハーヴィー・ギーエンが演じたギレルモは、感受性が強く、常に虐げられている。だが意外と打たれ強く、したたかに生き残る姿に、誰もが笑い感動する。
     

    さらに、マンハッタンのヴァンパイア・グループや人狼グループ(“werewolves”)も登場する。
     

    シーズン1の第7エピソード “The Trial”では、ウェズリー・スナイプス(『ブレイド』)、ティルダ・スウィントン(『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』)、エヴァン・レイチェル・ウッド(“True Blood”)、ダニー・トレホ(『フロム・ダスク・ティル・ドーン』)など、過去の吸血鬼映画・ドラマに出演したアクターたちが「ヴァンパイア評議者」としてゲスト出演している(残念ながらキーファー・サザーランド、トム・クルーズ、ブラッド・ピットは欠席)。
    シーズン2ではマーク・ハミルも登場する。
     

    残念な吸血鬼の目から垣間見る残念な人間たち!
    ショーランナーは、共同監督/共同脚本/ゲスト出演も兼ねたニュージーランドの奇才ジェマイン・クレメント。元ネタとなった2014年の同名映画(邦題『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』)でも、主演/共同監督/共同脚本を務めた。
     

    今回のドラマ版は世界観こそ映画版と共有するが、ストーリーと主役4人のキャラはすべてオリジナル。
    中世の雰囲気を醸し出すセピア調の画面が新鮮で、CGを使わない昔ながらの特撮がよくフィットしている。B級感満載の映画版よりはるかに質感があり、ストーリー、笑い、演技などあらゆる面でオリジナルを凌ぐ。
     

    本作はインタビュアーが見えないフィクションのインタビュー形式(“mockumentary”と呼ばれる)で描かれる。各21-30分の短いエピソードはゆったりとした語り口でスケッチ風に場面展開し、シャープな笑い、ツボを押さえた笑い、エグい笑いが絶妙のタイミングで繰り出される。
    あくまでおバカなコメディで高尚さはない。だが残念な吸血鬼たちの言動が、皮肉にも人間の間抜けさ、愚かさ、情けなさの風刺になっている点は見逃せない。今年のエミー賞候補(作品賞、脚本賞)になったのも当然だ。
     

    “What We Do in the Shadows”は斬新でまったく怖くない、抱腹絶倒のホラー・コメディなのだ!
     

    制作は“The Americans”、“Fargo”、“Mayans M.C.”、“Pose”など、「HBOより通俗的だが意外と玄人好みの作品」を得意とするFX。アメリカではシーズン2まで放送済みで(各10話)、シーズン3の制作も決まっている。
    現時点で日本では放送予定がないようだが、手を挙げるのはどこだ?
     

    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」㊿
    Title: “True Love”
    Artist: Bing Crosby and Grace Kelly
    Movie: “High Society” (1956)

    ※「YouTubeで見る」をクリック
    グレース・ケリーはキャリアの絶頂期に『上流社会』を最後に引退、モナコ公妃になりました。
    冒頭のシーン、おしゃれでしょ。

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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    https://www.jvta.net/blog/5724/


     
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