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代表/新楽直樹のコラム「Tipping Point」連載20年 特別編(2) 言葉の錬金術 ~伝えることは、学ぶこと~

代表/新楽直樹のコラム「Tipping Point」連載20年 特別編(2) 言葉の錬金術 ~伝えることは、学ぶこと~
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「Tipping Point」の連載を開始したのはインターネットが日常化し始めた2002年。スクール・メルマガの配信と共にスタートし、これまで200本以上のエッセーを綴りました。20年の節目を迎える今、「なぜ書くのか」「自立した職業人であることを目指す皆さんに何を伝えることができるのか」を、初心に立ち返って見つめ直します。

 

今回は修了生からいただいたTipping Pointへの感想が、私にとって得難い財産になっているという話をしたい。
 

■成長を止めない人の「弱さ」は強み
前回、私のエッセーの原点は拭うことのできない弱さや未熟だと書いた。弱いからこそ生じる気づきや、未熟だからこそ目に留まる小さな真実がある。そうしたセンサーは本来誰の胸の内にもある。しかし現実はセンサーを発動させる機会を奪いがちだ。強い者や成熟した仕組みを無条件で良しとする場では、弱さや未熟さは焦りや劣等感にすり替わるからだ。
 

しかし、人生の多くの時間を「自立(自律)した個人として生きたい。学び、成長し続けたい」と願う方々と過ごしてきた私の目には、「強い者や成熟した仕組み」のほうが、むしろ不明確で危いものに映る。事実、絶対視されていた強さや成熟の象徴が一夜にして瓦解していくシーンを幾度となく見てきた。「深夜のオフィスで灰皿いっぱいになるまでタバコをふかし、部下を怒鳴り散らしながら売上を伸ばせ!所得倍増だ!と叫ぶリーダー」に、今、そうなりたいと願う人はいないだろう。
 

一方、弱さや未熟さがとらえる小さな真実にはキラリと光る美しさがある。シェイクスピアを持ち出すまでもなく、時代も立場も超える普遍性がある。私が読者の皆さんと共有したいのはそういうものだ。誰もが抱いているのに無くしたと思っている地図の一遍。「私は探してみたらポケットにありました。あなたもきっとそこにありますよ」と囁きたいのだ。
 

それが、私にとって思わぬ収穫を生んでいる。何かに気づいた人が、コラムへの感想として自分の経験や思いを綴ってくれることがある。その多くが私にとって、差し出した以上の示唆と真実にあふれたものなのだ。まるで「もっと学んで成長せよ。そして書くべし」と背中を押されているようで、力が湧いてくる。
 

■10年以上前の修了生から届いた感想
今年の9月のある日、10年以上前の修了生から10年以上前に書いたTipping Pointの感想が届いた。ご本人から「名前と業務・職場名を伏せるなら」という条件で許可をいただいたので、ほぼ全文を引きたい。
 

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新楽直樹先生、ご無沙汰しております。

2010年に英日映像翻訳科を卒業しました××です。卒業後は××の翻訳業務でもお世話になりました。
 

先生が2011年に書かれた「ポケットに’mission’ を忍ばせて」は、折に触れ何度も読み返しています。
新型コロナウイルス感染症拡大という状況の中、自分の mission を見失っていないか、改めて読み返していました。現在は××大学で「進学アドバイザー」として、高校生などを対象に、進学のアドバイスや入試対策講座などを行っています。
 

先日ある高校生に「将来やりたいことがないのだけれど大学に進学してもいいのだろうか」という相談を受けました。
 

今回のコラム『「○○」は私の人生の一部である』にありました「生まれた時から自分の中に灯っていた小さい熱いともし火」に、そんな悩みを持つ高校生がどうしたら気づくことができるのか。試行錯誤する毎日です。先生の文章はいつも心にじんわりと染みます。それと同時に、よし、頑張ろうという気持ちにもなります。これからも先生の文章を楽しみにしております。
 
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うれしかった。コラムを誉めてもらったことに対してではない。そんなことは大人のたしなみ、メール送信上の社交辞令であることなど百も承知だ。うれしかったのは、私の弱さや未熟さを綴ったエッセーがこの方の内面を通して磨かれ、この方が向き合う高校生にも届いているかもしれないという事実である。
 

蛇足かもしれないが、私の返信の一部も引いておく。

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こんにちは。ほんとうにうれしいメッセージでした。
コラムに込めたメッセージを〇〇さんのように受け取ってもらえる方がいるのであれば、日々の発見や気づきの発信にもっともっと努めなければと、力が湧いてきます。
 

・・・(コロナ禍を過ごした)1年半、一人の受講生すら日本橋の教室に迎え入れることができないでいるこの状況は、私の心に経験したことのない喪失感をもたらしました。
メッセージをいただいてすぐに自分のコラム、「ポケットに’mission’ を忍ばせて」を読み返しました。
 

震災後の「とにかく節電。じっとしているのが善」という日本社会のムードに危機感を抱いたあの日のことが思い出されます。その違和感は「とにかくコロナにかからないことが第一。不自由を認めよ。やりたいことは保留だ」という今の社会の機運に対する懐疑心に似ています。もちろん、何でもかんでも好きにやれ!というわけではありません。感染拡大につながる活動を自粛するのは当然。しかし、だからといって、自粛機運にかまけて「学んで成長すること」にブレーキをかけるのは誤りだと訴えたいのです。休むどころかむしろギアを一段階も二段階も上げよ!というのが私の持論です。
 

「進学アドバイザー」ですか。一人の生徒の人生の岐路に寄り添って道を示す、重要な職務ですね。「将来やりたいことがないのだけれど大学に進学してもいいのだろうか」。そんな真っ直ぐで重い相談に向き合う仕事はたいへんだなぁと思います。同時に、うらやましくもあります。
 

「目標を指し示すこと」と同じかそれ以上に、「自分の心の奥にある種火の存在に生徒自身が気づくよう導き、さらに種火を燃え上がらせる手助けをする」ことが求められる仕事だからです。それこそがまさに「教育や職業訓練の原点」だと思います。
 

世の中には「先生」などと呼ばれて人の上に立っていると勘違いし、実際は「知識」を授けているだけの職業人が星の数ほどいます。しかし、「教育の原点を追求し続けている本物の先生」はどれほどいるのでしょうか。試行錯誤を繰り返しているという××さんは、その一人だと確信しました。
 

そんな教育者である××さんが、JVTAの修了生であることを誇りに思います。これからも気づきや発見があればぜひ教えてください。
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学びや生きる力をもらったのはむしろ私のほうだということをわかっていただけただろうか。’通学路の雪をかく‘が如く、なりふり構わず綴ったエッセー。それを読んでもらえただけでなく、こちらが伝えた以上の価値ある言葉で返してもらう。まさに「言葉の錬金術」。「Tipping Point」の連載を止めない、止められない理由はそんなところにもあるのだ。(特別編(3)に続く)
 

(参考)
☞「ポケットに’mission’を忍ばせて」 (2011年7月1日)
https://jvtacademy.lpf.jp/blog/tippingpoint/2011/07/mission.php

☞「『〇〇』は私の人生の一部である」(2021年7月2日)
https://www.jvta.net/blog/tipping-point/returns18/

☞「Tipping Point」連載20年 特別編(1) 尽きることのない想いを、エッセーに託す(2021年10月15日)
https://www.jvta.net/blog/tipping-point/returns19/
☞「Tipping Point」連載20年 特別編(3) 一瞬の煌めきを見逃さない(2021年10月29日)
https://www.jvta.net/blog/tipping-point/returns21/
 

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Tipping Pointby 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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Tipping Point Returnsのバックナンバーはコチラ
https://www.jvta.net/blog/tipping-point/returns/
2002-2012年「Tipping Point」のバックナンバーの一部はコチラで読めます↓
https://jvtacademy.lpf.jp/blog/tippingpoint/

 
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