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最新機器も続々! 「映画鑑賞に革命をおこす“新たなヒカリ”」<劇場編>

最新機器も続々! 「映画鑑賞に革命をおこす“新たなヒカリ”」<劇場編>
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2016年4月の障害者差別解消法施行(※)に伴い、映画を取り巻く世界が大きく変わり始めている。その流れから前回紹介したような機器やアプリが開発されている。(参考記事https://www.jvta.net/?p=9437)今回は映画館側の取り組みについて紹介しよう。
 

※障害者差別解消法は、「障害を理由に差別的取扱いや権利侵害をしてはいけない。社会的障壁を取り除くための合理的な配慮をする。国は差別や権利侵害を防止するための啓発や知識を広めるためのとりくみをおこなわなければならない」と定めている。
 

映画鑑賞もその一環として、現在映画業界では経済産業省の協力のもと、映画館で障害者も映画を楽しむためのガイドラインづくりを行っている。今年の9月から11月には映画館で最新機器を使用し、視聴覚障害者を迎えた実証実験を行った。第1回目の実証実験に協力したのはMOVIXさいたま。今回はその支配人、岡本敏幸さんに映画館のバリアフリーへの取り組みを聞いた。
 

【ポイント3】すべての人が映画を楽しめる環境づくりを目指して
MOVIXさいたま支配人 岡本敏幸さん インタビュー

 

◆バリアフリー上映の実証実験に参加したいきさつを教えてください。
 

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MOVIXさいたまで実証実験が行うことになったのは、この劇場は駅から近く、道順もまっすぐで利用しやすいことからです。当館は、さいたま新都心駅を出てから映画館に入るまで、さらにチケットカウンターやお手洗い、各シアターに入るまで全く段差がないつくりになっているので、日ごろから車椅子の方のご利用も多いという点も評価されました。また、私は社会福祉主事の資格を持っていて、特別養護老人ホームで働いていた経験があります。私だけではなく、MOVIXの支配人はほぼ全員、サービス介助士の資格を取得しています。
 

◆施設内のフロアのほとんどがフラットというのは、障害者だけでなく、高齢者や子どもにも優しい作りですね。
 
シネコンと呼ばれる大きな映画館はどこもバリアフリーを意識した作りになっています。各シアターの入り口にはスロープを設置し、車椅子のまま観られるスペースもあります。さらに、MOVIXには耳の聞こえにくい方のために音声を増幅する赤外線聴覚補助システムの貸し出しもあります。ヘッドフォンタイプと補聴器にひっかけて使う2種類があり、それぞれ20台ずつご用意していますが、PR不足もあり、実際にご利用される方はまだ少ないのが現状ですね。
 

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◆接客に関しては事前にシミュレーションを行ったそうですね。
 

イベントに携わったスタッフは約40名。NPO法人メディア・アクセス・サポートセンターさんから事前に接客のシミュレーションの講習を受けたスタッフが誘導を行いました。例えば視覚障害者の方をトイレにご案内する際の便座やペーパー、水を流すレバー、さらに手を洗う位置や乾かす場所などを言葉で伝えるなど具体的な対応を教えていただきました。私はこれまでの経験からバリアフリーとは特別扱いすることではないと考えています。受け入れ側が極端に身構えるとお客様に「そこまでしてもらわないと私たちは映画を観られないの?」と思わせてしまうので、ちょっとお手伝いをしようという意識で取り組めたらいいですよね。当館ではメガネ型端末やiPod touchなどの貸し出しも通常のカウンターで行ったのですが、「自然な対応で嬉しかった」というお声を頂きました。
 

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◆実際に接客をして初めて分ったことはありますか?
 

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視覚障害者の方の誘導より、聴覚障害者の方へのご案内の方が難しいと分かりました。筆談器や質問表を用意していましたが、話しながら書いて説明することの難しさに戸惑いましたね。また、空港の電光掲示板のように目で見える入場案内版が必要だと気付きました。「今開場しています、中に入れますよ」というご案内が音声だけだったので、聴覚障害者の方に伝わらず、当日は慌ててプラカードを用意して対応しました。
 

◆その案内版は聴力が弱まる高齢者にも必要なツールですね。
 

今、平日はシニア世代が中心なので、私たちもシニアに優しい環境づくりを意識しています。シニアの方は劇場が暗くなってから入場し、クレジットが流れている間に立ってしまう人が多いので、転倒事故も非常に多い。それを防ぐため、足元を照らすステップライトの設置や、劇場内の階段の境目をより白く明るくして目立たせるなどの対策をしています。
 

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今の映画館のシートはスタジアム方式といって座席に段差が付いていて前の人の頭が邪魔にならないのが特徴ですが、バリアフリーという意味では優しくない。受付や誘導時に施設の詳細についてどこまで説明できるかも今後の課題ですね。
 

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◆バリアフリー上映が日常になった場合、劇場側のコストの負担はありますか?
 
UDCastを使った方式なら、メガネ型端末を劇場側で常備するかにもよりますが、劇場側のコストはほとんどありません。当館では現在3Dメガネを2000本保有しており、利用1回あたり400円頂いています。メガネ型端末はまだ1台7万円前後と高額です。でも3Dメガネも初めは高額でしたが、認知度と利用の増加により、軽量で薄型になり価格は下がってきました。メガネ型端末も複数のメーカーが作っているので近いうちに同じようにもっと身近なものになると思います。そうすれば劇場側の負担も減りますし、必要な方は個人で所有して各劇場に持参することも可能になるでしょうね。
 

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◆案内スタッフの増員も必須ですね。
 
バリアフリー上映にはトイレや施設内をご案内するスタッフの増員が必須です。イベントの時は通常より担当を増やしたものの、これを常に維持するのは難しい。バリアフリー上映をすることでどのくらいお客様が増えるのか、どこまでコストをかけるのかが今後の課題ですね。ですから最初は一定期間だけのバリアフリー上映からスタートし、やりながら学んだ点を日々反映し、よりよくする工夫をしていく形になると思います。今回の実証実験のおかげでスタッフが接客への意識を高めてくれました。何が必要ですか?というお声掛けができて誘導の手順が分かっているスタッフがいれば対応できると思います。
 

◆映画館は今後、すべての人に優しい環境になりそうですね。
 
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現在、MOVIXを含む、全国の映画館で、午前10時の回に『ローマの休日』のような往年の名作を上映する「午前十時の映画祭」というイベント上映が行われています。人気企画なのでこちらでもぜひバリアフリー上映をしたいですね。映画館はお客様を非日常へご案内する特別な空間です。来年の4月以降から徐々にですがすべての人がいつでも気軽に映画館に足を運べるよう、今回の体験を活かした環境づくりをしていきたいですね。
 

MOVIXさいたま 公式サイト
 http://www.smt-cinema.com/site/saitama/

【info】
MASC×JVTA バリアフリー視聴用 音声ガイド&字幕ライター養成講座

講座の詳細や修了生の活躍はこちら
https://jvtacademy.lpf.jp/chair/lesson3.php

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